2013年 08月 06日
原発危機:建屋内地下水流入抑制対策工事の工法に関する私見
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[東京 5日 ロイター] - 原子力規制庁の金城慎司・東京電力福島第1原子力発電所事故対策室長は5日、東電(9501.T: 株価, ニュース, レポート)福島第1原発の放射能汚染地下水について、同社が汚染水の流出を防ぐために設けた地中の遮水壁を上回った可能性があると述べ、「緊急時」との認識を示した。金城室長はロイターに対し、汚染された地下水は法的基準を超えて海に流出している可能性が高く、東電の地下水くみ上げ計画は一時しのぎにすぎないとの見方を示した。また、汚染地下水が遮水壁を上回った可能性が高く、地表に上がってくる可能性を否定できないと述べ、現在は「緊急時」と指摘した。
報道によると原子力規制委員会委員長は,「汚染の濃度が低いものは海に捨てられるようにしないといけない」と述べたとのことだが見識を疑ってしまう.あるレベル以下の汚染水が排出できるというのなら何の苦労もいらない.単純に水で割ってやればよいというだけの話だ.無尽蔵と言ってもよい海の水を使えばいくらでも希釈することが可能だから,原理的には無制限に放出できることになってしまう.「海に放出した場合の影響や風評被害については今後、考えていく」との発言に至っては無責任きわまる暴言と言うしかない.
わたしは2011年4月6日に2号機取水口付近で発生した高濃度汚染水の流出が止まったのを見届けて何とか緊急事態だけは切り抜けることができたと判断し,その後はほとんどネット情報にもアクセスせず世俗から遠ざかる日々を過ごしていたが,まさかこんなことになっているとは…情報を整理している時間はないので以下に緊急対策のポイントのみ記すことにする.
1.2011年7月22日東電が発表した「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」の資料E「地下水の放射性物質濃度の測定結果」で見る限りは地下水の計測値が告示濃度を超えているのはNo.1, No1-2~1-4の5地点でいずれも1号機スクリーンと2号機スクリーンの中間区画と見られることから,これらの地下水観測孔を使って地下水を汲み上げ,トレンチに還流させる.これ以外の危険点がある場合には同様の措置を取る.⇒これにより海面近くの地下水面が下降し汚染水が地中の遮水壁を超える事態を暫定的に回避することができる.ただし,これはあくまで時間稼ぎだ.(薄まってしまうので水管理上不利になる)
2.これまでの経緯から推定して高濃度汚染水が漏出している経路はトレンチではなく地中に直接埋設されている電源管路である可能性がもっとも高いように思われる(この推定はTSOKDBA氏の緻密な分析に依拠するものである).これらをすべて掘り起こして(疑わしい箇所について)総点検し止水する.(図面は当てにならないので現物で追いかけるしかない.)
3.水仕舞いを手抜かりなく行うためには(表流水,伏流水,地下水を集めるための)何らかの「閉水路」が必要である.新たな工作物を作るのが限りなく困難な状況下では既存の「トレンチ」をそれに当てるのが順当であるから,本来であればトレンチと立坑の埋設は最終段階に行われなくてはならないと考える.確かにトレンチを埋め立ててしまえば見た目にはかなり片付いたように見えるからその誘惑に乗るのは容易いが,それでは患部が全身に転移して手が付けられなくなることを懼れるからだ.
もしトレンチの埋め立てを行うとすれば,少なくとも以下のルールは厳守されなくてはならない.
トレンチ埋め立て工の施工基準:トレンチの埋設を行う場合には,まず完全に排水(プール/タンクに移動)して漏水箇所を確認し,その箇所を「完全に止水」してからでなければ埋め立てを行ってはならない.(わたしはこれを実施することは技術的・作業安全的にかなり難しいのではないかと推定している.もしそれが可能ならば水処理問題はすでに解決している)水中で硬化するコンクリートなどを用いて「とりあえず埋め殺すこと」は可能であっても,絶対にそのようなことを行ってはならない.いよいよ汚染水がどこに行くか分からなくなってしまう.
ここまでが(海面への流出を食い止めるための)応急措置である.次に行うべきことは建屋地下の埋め殺しである.これを実行しない限り汚染水の際限のない増加を食い止めることができない.これを実施しない限りこの難事業のブレークスルーを見ることはできないと思う.わたしはこの作業はとっくの昔に終わっているものと思っていたのだが・・・確かに建屋に接近することもできないような状況でそれがどれほど困難なものであるかは想像に難くないが,にも関わらず随所で貫通部の止水などを試みている状況からして,絶対不可能というものでもないのではないかとも思う.というか,それを決行するしかない.(指名されれば行きますよ,作業員として)
4.建屋地下を埋め殺すためには,①地下の壁に貫通する穴を空ける(エア抜きの穴も必要),②コンクリート圧送ホースをできる限り奥まで挿入する,③ホースを徐々に引き抜きながらコンクリートを圧送する,の3段階の作業が必要と考えられる.建屋地下の壁に穴を空けるためには塹壕のようなものを掘って機械をそこに設置する必要がある.もし,可能ならば①~③の作業をすべて自動化するような機械を開発したいところだが,遠隔から操作できるような長いドリルのようなものを用意するのはそれほど難しくないのではないだろうか?
この工程である程度空隙が生じてしまうことは避けられない.しかし,これが実施できればその効果はおそらく期待以上のものがあると思う.建屋地下を埋め殺した後なら貫通部に残余した空隙の後処理などもずっと容易になるのではないかと思う.残った空隙が十分小さいと仮定すれば場合によっては目止め剤(グラウト)のようなものを冷却水に混入するなどのことも考えられる.(ただしこれは格納容器の底が抜けているような場合でなければあまり効果がない)
この段階まで来れば,上記の「トレンチ埋め立て工の施工基準」を踏まえてトレンチを潰すことも十分可能になる.以下抜本対策を考える.(もし,ここまでのステップで高濃度汚染水の漏水を完全に止めることができていれば,すでに地下水の流入問題は解決しているのだが・・・)
TEPCOは以下の2項目の対策を提出しすでに実施プロセスに入っている.①地下水バイパス,②サブドレンによる水位管理.わたしはこれらの対策はほとんど無意味ないし実施困難と考える.いまその理由(連通管の原理など)をここで説明する紙幅はないが,4月に緊急に立ち上げられた「汚染水処理対策委員会」でも同様の判断に傾いているのではないか?という気がする.というのは,5月30日に公開された「地下水の流入抑制のための対策」では,「東京電力が取り組んでいる地下水バイパス、建屋近傍のサブドレンによる水位管理等の対策が十分に機能しないリスクに備えた対策を講ずるべきである。」としているからだ.
汚染水処理対策委員会はTEPCO(および多分原子力規制委員会)の顔を立てて,「上記[東電]の対策に加えた抜本策の柱として、プラント全体を取り囲む陸側遮水壁を設置すべきである。」とした.陸側遮水壁の工法としては①凍土壁,②粘土壁,③グラベル(砕石)連壁の3種が検討され,鹿島建設が提案する凍土壁工法が採用された.わたしは基本的にこの方向性に賛同するものではあるが,グランドデザインとして「ドライアップ」という考え方を提示しておきたい.ドライアップというのは基本的に敷地全体を干し上げるという考え方である.(このアイディアはプラント敷地の地勢図特に透水層を含む地層図を見ることによって始めて可能になる.)
山側で汲み上げた地下水をバイパスして海洋に排水するという方式は漁民たちの強い反発を食らっている.地下水の汚染が疑われるためだ.TEPCOは対策として3系統の排水系を用意し,それらを輪番で放水することにより放射線レベルを監視する時間制御が可能であるとしている.しかし,それでも疑念を100%払拭することは難しいだろう.この装置はこれから10年,20年,30年という長期にわたって運用し続けなくてはならないという宿命にあるからだ.
5.もっとずっとシンプルな方式がある.敷地の山側を遮水壁で∩字型に取り囲めばよい.このイメージにやや近いのは大成建設が提案した遮水壁のデザインだ.大成建設の提案は外国製の特殊な掘削装置を使ってスラリーウォールを地中に構築するという方式だが,本提案は工事期間の最短化を眼目とし鋼矢板を打ち込むだけの簡易工法とした.仮に水密な陸側遮水壁ができたとするとその内部は一種のプールのようなものになる.このプールの形状はできるだけ単純なものでかつ山側に凸であるようなものにする必要がある.山側から遮水壁の境界外側を流れ下る地下水流をできるだけ速やかに海に落とすようにするためだ.遮水壁面を山側の勾配に対し垂直な平面にするのは極めて危険だ.遮水壁面が「ダム」になってしまうだろう.
仮に「地下水バイパス」工事を実施したとしても,それが効果を現すまでには(地下水の流速を考えると)かなりの時間がかかるのではないかと思う.TSOKDBA氏はALPS(多核種除去設備)の稼動が遅れている件に関し,「部分最適を求めるのではなく全体最適を追究すべきではないか?」と提言されているが,わたしも同意見だ.まず,上記のような遮水壁を「鋼矢板」(のみ)で可及的速やかに構築するというのが最善なのではないかと考える.
この「遮水壁」で囲まれたプールの敷地面の降水量と蒸散量が長期的にはほぼペイすると仮定してもそれほど無理ではないとしてよいだろう.注水冷却システムの水循環が完全な閉鎖水系になっているとすれば,あとはプール内に滞留する地下水の始末だけになる.地下水系は山側から海側に向かう勾配を持っているので海側遮水壁が完成していない段階では海側に流出することになる.また,海側遮水壁が完成した暁には海側に溜まって地下水面を上げることになると推定される.この水は海側で汲み上げて山側でディスチャージするのが適当である.完全にドライアップするということはないとしても,この方式を「塩田工法」と呼ぶのは必ずしも不適切ではない.塩田工法は即行で実施できるというのが最大の利点である.
(海側で汲み上げた地下水を山側でディスチャージするためには原則としてその水の放射線濃度が基準以下であることを要する.それを超える場合にはトレンチに戻すことになる.これはサブドレインなどを使って汲み上げた場合などにも適用される.逆に言えば,トレンチを潰すことができるのは海側で汲み上げた地下水の濃度が規定値を下回る状態になった場合と言ってよいだろう.もしあらゆる可能な方法を試みてその条件を満たすことができない場合には,全周的に閉じた遮水壁によってプラント内の地下水を完全に遮断するというのが唯一の選択肢になる.)
6.恒久的かつ完全に閉合した海・陸遮水壁を構築する.「凍土壁工法」はとてもチャレンジングな方法でわたしも支持したいが,まだ未解決の課題が残っているのではないかと思う.その意味で他の方式との併用ないし切り替えということもある得るかもしれない.もし,これ(凍土壁)が現実化可能であるとすれば,その技術を応用して建屋全体を凍結管で囲み原子炉自体を凍結してしまうということすら考えられるのではないだろうか?
清水建設の提案書にある,「施工可能で対策効果の大きい箇所から、その場に適した対策工を組み合わせて実施し、その対策効果を評価した上で、さらに範囲を広げる、追加の対策を実施する等の次のステップに進む」というのも重要なポイントだ.場当たりのように聞こえるかもしれないが,一つづつ潰してゆけばそれだけ作業環境も向上する.これは現場を知る人間の知恵であると思う.ともかく日本国の総力を挙げてこの難事業を成し遂げるしかない.
とりあえず思いついたところを記した.何かしらご参考になるところがあれば幸いである.
(今日はここまで.ご要望があれば後から図版を付けます・・・)
報道によると原子力規制委員会委員長は,「汚染の濃度が低いものは海に捨てられるようにしないといけない」と述べたとのことだが見識を疑ってしまう.あるレベル以下の汚染水が排出できるというのなら何の苦労もいらない.単純に水で割ってやればよいというだけの話だ.無尽蔵と言ってもよい海の水を使えばいくらでも希釈することが可能だから,原理的には無制限に放出できることになってしまう.「海に放出した場合の影響や風評被害については今後、考えていく」との発言に至っては無責任きわまる暴言と言うしかない.
わたしは2011年4月6日に2号機取水口付近で発生した高濃度汚染水の流出が止まったのを見届けて何とか緊急事態だけは切り抜けることができたと判断し,その後はほとんどネット情報にもアクセスせず世俗から遠ざかる日々を過ごしていたが,まさかこんなことになっているとは…情報を整理している時間はないので以下に緊急対策のポイントのみ記すことにする.
1.2011年7月22日東電が発表した「海側地下水および海水中放射性物質濃度上昇問題の現状と対策」の資料E「地下水の放射性物質濃度の測定結果」で見る限りは地下水の計測値が告示濃度を超えているのはNo.1, No1-2~1-4の5地点でいずれも1号機スクリーンと2号機スクリーンの中間区画と見られることから,これらの地下水観測孔を使って地下水を汲み上げ,トレンチに還流させる.これ以外の危険点がある場合には同様の措置を取る.⇒これにより海面近くの地下水面が下降し汚染水が地中の遮水壁を超える事態を暫定的に回避することができる.ただし,これはあくまで時間稼ぎだ.(薄まってしまうので水管理上不利になる)
2.これまでの経緯から推定して高濃度汚染水が漏出している経路はトレンチではなく地中に直接埋設されている電源管路である可能性がもっとも高いように思われる(この推定はTSOKDBA氏の緻密な分析に依拠するものである).これらをすべて掘り起こして(疑わしい箇所について)総点検し止水する.(図面は当てにならないので現物で追いかけるしかない.)
3.水仕舞いを手抜かりなく行うためには(表流水,伏流水,地下水を集めるための)何らかの「閉水路」が必要である.新たな工作物を作るのが限りなく困難な状況下では既存の「トレンチ」をそれに当てるのが順当であるから,本来であればトレンチと立坑の埋設は最終段階に行われなくてはならないと考える.確かにトレンチを埋め立ててしまえば見た目にはかなり片付いたように見えるからその誘惑に乗るのは容易いが,それでは患部が全身に転移して手が付けられなくなることを懼れるからだ.
もしトレンチの埋め立てを行うとすれば,少なくとも以下のルールは厳守されなくてはならない.
トレンチ埋め立て工の施工基準:トレンチの埋設を行う場合には,まず完全に排水(プール/タンクに移動)して漏水箇所を確認し,その箇所を「完全に止水」してからでなければ埋め立てを行ってはならない.(わたしはこれを実施することは技術的・作業安全的にかなり難しいのではないかと推定している.もしそれが可能ならば水処理問題はすでに解決している)水中で硬化するコンクリートなどを用いて「とりあえず埋め殺すこと」は可能であっても,絶対にそのようなことを行ってはならない.いよいよ汚染水がどこに行くか分からなくなってしまう.
ここまでが(海面への流出を食い止めるための)応急措置である.次に行うべきことは建屋地下の埋め殺しである.これを実行しない限り汚染水の際限のない増加を食い止めることができない.これを実施しない限りこの難事業のブレークスルーを見ることはできないと思う.わたしはこの作業はとっくの昔に終わっているものと思っていたのだが・・・確かに建屋に接近することもできないような状況でそれがどれほど困難なものであるかは想像に難くないが,にも関わらず随所で貫通部の止水などを試みている状況からして,絶対不可能というものでもないのではないかとも思う.というか,それを決行するしかない.(指名されれば行きますよ,作業員として)
4.建屋地下を埋め殺すためには,①地下の壁に貫通する穴を空ける(エア抜きの穴も必要),②コンクリート圧送ホースをできる限り奥まで挿入する,③ホースを徐々に引き抜きながらコンクリートを圧送する,の3段階の作業が必要と考えられる.建屋地下の壁に穴を空けるためには塹壕のようなものを掘って機械をそこに設置する必要がある.もし,可能ならば①~③の作業をすべて自動化するような機械を開発したいところだが,遠隔から操作できるような長いドリルのようなものを用意するのはそれほど難しくないのではないだろうか?
この工程である程度空隙が生じてしまうことは避けられない.しかし,これが実施できればその効果はおそらく期待以上のものがあると思う.建屋地下を埋め殺した後なら貫通部に残余した空隙の後処理などもずっと容易になるのではないかと思う.残った空隙が十分小さいと仮定すれば場合によっては目止め剤(グラウト)のようなものを冷却水に混入するなどのことも考えられる.(ただしこれは格納容器の底が抜けているような場合でなければあまり効果がない)
この段階まで来れば,上記の「トレンチ埋め立て工の施工基準」を踏まえてトレンチを潰すことも十分可能になる.以下抜本対策を考える.(もし,ここまでのステップで高濃度汚染水の漏水を完全に止めることができていれば,すでに地下水の流入問題は解決しているのだが・・・)
TEPCOは以下の2項目の対策を提出しすでに実施プロセスに入っている.①地下水バイパス,②サブドレンによる水位管理.わたしはこれらの対策はほとんど無意味ないし実施困難と考える.いまその理由(連通管の原理など)をここで説明する紙幅はないが,4月に緊急に立ち上げられた「汚染水処理対策委員会」でも同様の判断に傾いているのではないか?という気がする.というのは,5月30日に公開された「地下水の流入抑制のための対策」では,「東京電力が取り組んでいる地下水バイパス、建屋近傍のサブドレンによる水位管理等の対策が十分に機能しないリスクに備えた対策を講ずるべきである。」としているからだ.
汚染水処理対策委員会はTEPCO(および多分原子力規制委員会)の顔を立てて,「上記[東電]の対策に加えた抜本策の柱として、プラント全体を取り囲む陸側遮水壁を設置すべきである。」とした.陸側遮水壁の工法としては①凍土壁,②粘土壁,③グラベル(砕石)連壁の3種が検討され,鹿島建設が提案する凍土壁工法が採用された.わたしは基本的にこの方向性に賛同するものではあるが,グランドデザインとして「ドライアップ」という考え方を提示しておきたい.ドライアップというのは基本的に敷地全体を干し上げるという考え方である.(このアイディアはプラント敷地の地勢図特に透水層を含む地層図を見ることによって始めて可能になる.)
山側で汲み上げた地下水をバイパスして海洋に排水するという方式は漁民たちの強い反発を食らっている.地下水の汚染が疑われるためだ.TEPCOは対策として3系統の排水系を用意し,それらを輪番で放水することにより放射線レベルを監視する時間制御が可能であるとしている.しかし,それでも疑念を100%払拭することは難しいだろう.この装置はこれから10年,20年,30年という長期にわたって運用し続けなくてはならないという宿命にあるからだ.
5.もっとずっとシンプルな方式がある.敷地の山側を遮水壁で∩字型に取り囲めばよい.このイメージにやや近いのは大成建設が提案した遮水壁のデザインだ.大成建設の提案は外国製の特殊な掘削装置を使ってスラリーウォールを地中に構築するという方式だが,本提案は工事期間の最短化を眼目とし鋼矢板を打ち込むだけの簡易工法とした.仮に水密な陸側遮水壁ができたとするとその内部は一種のプールのようなものになる.このプールの形状はできるだけ単純なものでかつ山側に凸であるようなものにする必要がある.山側から遮水壁の境界外側を流れ下る地下水流をできるだけ速やかに海に落とすようにするためだ.遮水壁面を山側の勾配に対し垂直な平面にするのは極めて危険だ.遮水壁面が「ダム」になってしまうだろう.
仮に「地下水バイパス」工事を実施したとしても,それが効果を現すまでには(地下水の流速を考えると)かなりの時間がかかるのではないかと思う.TSOKDBA氏はALPS(多核種除去設備)の稼動が遅れている件に関し,「部分最適を求めるのではなく全体最適を追究すべきではないか?」と提言されているが,わたしも同意見だ.まず,上記のような遮水壁を「鋼矢板」(のみ)で可及的速やかに構築するというのが最善なのではないかと考える.
この「遮水壁」で囲まれたプールの敷地面の降水量と蒸散量が長期的にはほぼペイすると仮定してもそれほど無理ではないとしてよいだろう.注水冷却システムの水循環が完全な閉鎖水系になっているとすれば,あとはプール内に滞留する地下水の始末だけになる.地下水系は山側から海側に向かう勾配を持っているので海側遮水壁が完成していない段階では海側に流出することになる.また,海側遮水壁が完成した暁には海側に溜まって地下水面を上げることになると推定される.この水は海側で汲み上げて山側でディスチャージするのが適当である.完全にドライアップするということはないとしても,この方式を「塩田工法」と呼ぶのは必ずしも不適切ではない.塩田工法は即行で実施できるというのが最大の利点である.
(海側で汲み上げた地下水を山側でディスチャージするためには原則としてその水の放射線濃度が基準以下であることを要する.それを超える場合にはトレンチに戻すことになる.これはサブドレインなどを使って汲み上げた場合などにも適用される.逆に言えば,トレンチを潰すことができるのは海側で汲み上げた地下水の濃度が規定値を下回る状態になった場合と言ってよいだろう.もしあらゆる可能な方法を試みてその条件を満たすことができない場合には,全周的に閉じた遮水壁によってプラント内の地下水を完全に遮断するというのが唯一の選択肢になる.)
6.恒久的かつ完全に閉合した海・陸遮水壁を構築する.「凍土壁工法」はとてもチャレンジングな方法でわたしも支持したいが,まだ未解決の課題が残っているのではないかと思う.その意味で他の方式との併用ないし切り替えということもある得るかもしれない.もし,これ(凍土壁)が現実化可能であるとすれば,その技術を応用して建屋全体を凍結管で囲み原子炉自体を凍結してしまうということすら考えられるのではないだろうか?
清水建設の提案書にある,「施工可能で対策効果の大きい箇所から、その場に適した対策工を組み合わせて実施し、その対策効果を評価した上で、さらに範囲を広げる、追加の対策を実施する等の次のステップに進む」というのも重要なポイントだ.場当たりのように聞こえるかもしれないが,一つづつ潰してゆけばそれだけ作業環境も向上する.これは現場を知る人間の知恵であると思う.ともかく日本国の総力を挙げてこの難事業を成し遂げるしかない.
とりあえず思いついたところを記した.何かしらご参考になるところがあれば幸いである.
(今日はここまで.ご要望があれば後から図版を付けます・・・)
by exod-US
| 2013-08-06 11:16
| フクシマ・サボタージュ
















