2011年 04月 02日
原発危機:福島第一原発水葬までのロードマップ
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東京消防庁ハイパーレスキュー隊員を始めとする数多くの自らの命を顧みない無名の人々の献身により,第一の危機は乗り越えることができた.危急の事態に「圧倒」される初期状態からぎりぎりのところで巻き返しに転じ,何とか事態をコントロールできる可能性が芽生えてきた.全世界の注視を浴びる中でここまで踏ん張ることができたことを日本国民の一人として誇りに思う.しかし,依然として前途は多難であり,楽観は許されない.
現場的には大量の放射性汚染水をどうするかというところで関係者の苦悶・苦闘が続いている.基礎技術的には高濃度放射性廃液処理技術はすでに存在しているから,克服すべき課題は量の問題だけと言える.量の問題は最終的には時間の問題であり時間によって解決することができる.つまり,ある意味で汚染水の問題は火急の課題ではない.
本当の問題はその時間がお金に換算されるというところにある.なぜこの時期になって電力会社の公金注入による救済策が急浮上してきたのか?福島第一原発を廃棄処分するのに30年間で7000億円かかると試算されている.誰がソロバンを弾いたのだろう?いかにももっともらしい数字だが本当にそんなにかかるのか?(実際のところ,30年間のうちの大部分の時間は単に放射線レベルを下げるために施設を「放置」しておくための時間だ).国が専門家・技術者・作業員を直接雇用してこれに当たれば,おそらく100億円あればお釣りが来るだろう.
実際,もっとも危険度の高い汚れ作業はすべて低賃金で働く使い捨ての労務者に押し付けられるのであり,残ったお金は国民を食い物にしてきた紳士達のポケットにまるまる仕舞い込まれるのだ.この不当なマネーの分け前に預かるには是が非でも東京電力を私企業として延命させる必要があるということが彼らにもようやく分かったというのが真相である.
原子力の軍事利用と平和利用が同じ人たちによりまったく同じ(殺人)思想で推進されてきたことは驚くべき事実だ.チェルノブイリの事故から25年が経過し,「石棺」と呼ばれる原子炉建屋の外部被覆構築物の建て替えが検討されている.この1000億円かかると言われるプロジェクトを推進しているのは原爆を作った人たちの会社ベクテルである.原爆の製造者が原子力発電所を建設し,それが爆発すると今度はその後始末でさらに儲けるという構図.ウクライナ政府にはそんな巨額の金はないので,日本政府もかなりの金額をそれに拠出しようとしている.

チェルノブイリ原発の1000億円のシェルターイメージ
前回の「原発危機:冷却水小循環系(ECCS)を閉鎖大循環系で代替する」というエントリでわたしは,現在実行されている汚染水の仮設ポンプによる移送を閉鎖循環系に転換し,最終的にはある程度恒久的な施設として構築することを提案した.この方式では汚染水の産出量を極小に抑えることができるので,事後の高濃度放射性物質廃棄処理で扱わなくてはならない廃棄物量を大幅に削減することができるというコストメリットがある.しかし,上記したように,廃棄処理物量削減のコストメリットということに彼らはあまり関心を持っていないようだ.
原子炉建屋地下と地下のトレンチに滞留している汚染水は1シーベルト以上という高濃度放射性廃水である.1シーベルトというのはわたしの身体感覚ではサリンなどの有毒ガスとほぼ同等の致死性液体であり,それを大量に循環させることの難しさはわたしも承知している.その意味では東電が採用した外部プールへの「移送」というのはそれなりの合理性があると思う.
この方式の欠点は容易に想像できるように膨大な水量を閉鎖水系として管理しなくてはならないという点にあるが,メリットもある.それは,この方式では水流を循環させないのである意味で一種の「洗浄」を暗黙に実施していることになる点だ.膨大な汚染水を管理しなくてはならなくなるが,その代わり建屋内の放射線レベルは徐々に下降し作業環境はかなり改善されるだろう.
しかし,十全な作業が遂行できるようにするためには「水漏れ」を完全に止めなくてはならない.水漏れを完全に止めることができなければ,最終的に無限量の水を注水することになり,必然的に無限量の汚水をどこかに保管しなくてはならないという「不可能な事態」に何時か直面することになる.つまり,ある時点で現在の水管理方式は破綻する.(これは注水された水が環境に放出されていないということを仮定した議論である.もし,たとえばどこかに海洋に放出するような「裏道」が存在すれば,注水量と放出量が等しくなった時点で均衡する.)目先の作業に追われて,この辺りに関してはまだ誰も考えていないようなので,2,3のポイントを挙げておこう.
1号~3号機の建屋地下にたまり水が発生し,それを汲み出す作業が行われているが,相当量の水を汲み出しても10センチメートル程度しか水位が低下しないという報告がある.これは容易に想像されるようにトレンチと原子炉建屋地下が連通しているためであり,トレンチの水面を下げなければ地下のたまり水の水面は下がらない.逆にトレンチの水を汲み出せば建屋地下の水も自然に引くことになるだろう.

地下トレンチは1号から3号までのタービン建屋から海岸線の手前60メートルくらいのところまで伸びている.トレンチの容量は1号が3100トン,2号が6000トン,3号が4200トンあり,それらすべてがほぼ満水状態になっているので,合計13300トンの高濃度汚染水がここに蓄えられている.これから推量されることは,この20日間の連続注水,放水により,原子炉周辺に溢れた高濃度放射性廃水の「ほぼ全量」がこのトレンチに流入していたという事実である.
わたしの目には,これはほとんど「奇跡」のように見える.もし,これがなかったらどういうことになっていたか?もしもこのトレンチがなければおそらく太平洋沿岸はすでに死の海と化していたに違いない.これは「汚染水」などではなく,わたしたちの国土と大洋を守ってくれた「神水」と考えなければバチが当たるだろう.最悪の場合6基の原子炉が連続的に臨界に達し,そこに積み上げられている膨大な量の薪(使用済み・未使用核燃料)とともに壮絶な大爆発を起こしていたことを考えれば,これを「神水」と呼ぶことが誇張でないことはお分かり頂けるだろう.
この1万3300トンの「神水」を少なくとも3度汲み替える必要があるだろう.つまり,少なくとも4万トンの「神水」を蓄えることのできるプールが必要である.前回エントリでは阿修羅の匿名氏の提案を否定的に評価しているが,ここまで来るとタンカーを使うというのがもっとも現実的な提案であるように思われてくる.2万トンタンカーなら2艘,4万トンなら1艘で間に合うというのは大きなアドバンテージだ.匿名氏の先見の明には脱帽する他ない.真の技術者とお見受けする.
放射性廃棄物の海洋投棄に関しては厳しい国際取り決めがあり,その点からも「船」は難しいのではないかと思っていたのだが,実は「はしけ」を放射性液体廃棄物処理施設として使用しているという実例があった.旧ソ連の老朽原子力潜水艦の解体に関わり日本からの資金援助によって建造された「すずらん丸」がズヴェズダ造船所に係留され2001年から稼動している.すずらん丸は年間7000トンの低レベル放射性液体廃棄物を処理する能力を持っている.

もし陸地に容量4万立方メートルの溜池を作るとしたら,深さ5メートルとして幅80メートル,長さ100メートルの巨大プールを作らなくてはならない.しかもこれは水密であることを要する.応急的に作るのなら,シートパイルを打ち込んでその中を掘削し,シートパイルの内側に「粘土」の土嚢を積むことが考えられる.有機性の土嚢なら時間が経てば袋が溶融して水密な土壁になる.それを待ち切れないとすれば,左官工事が必要になるかもしれない.底面にも少なくとも1メートルは粘土を入れなくてはならないだろう.どう見てもタンカーを使う方に分があるように思われる.実際,すでに給水のために接岸している米軍のはしけを使うという話も出ている.
汚染水を保管する容器は何とか確保できたとしてその先を考えよう.直ちにやるべきことはトレンチの水をぐんぐんと引いて容器に移し替えてゆくことである.トレンチの水面が下がれば建屋地下の水も引き,予定した作業が可能になる.どんな作業が予定されていたのか知らないが,わたしはこの時点で建屋地下をコンクリートで完全に充填し埋め殺すべきであると思う.なぜか?「汚染水の漏れ」がある箇所を作業者の被曝リスクを回避しながら完全に封止するためである.わたしは現時点においてはこれ以外の方法はないのではないかと思う.
環境への放射性物質の放出を防止することは政府の日本国民に対する義務であり,日本の国際社会に対する責務である.高濃度放射性汚染水の流出を食い止めるには,「汚染水の漏れ」を早急に止める必要がある.東電は現時点ではまだ,法令に基づきマニュアルに記述された〔使用済み核燃料排出〕→〔系統除染〕→〔安全貯蔵〕→〔解体撤去〕→〔廃棄物処理処分〕という流れを型通り実施したいと思っているようだが,無理だ.何よりも時間が待ってくれない.
従って,福島第一原発埋葬の第一段階は,レベルゼロ,つまり地表面から下のすべての構築部分にコンクリートを充填することになると思う.これには原子炉建屋も含まれる.実際の建造物がどのようなレベルで構築されているかの詳細は分からないが,レベルゼロ以下の空間をすべてコンクリートで充填すれば,少なくとも排水系のすべての漏れは止まるはずだ.コンクリートの打設はもちろん無人で行われなければならない.逆に言えば,現在のロボット技術で無人でできることと言えばそれくらいしかなさそうだ.

これにより,すべての溢れ水は(もしあれば)地表水となり,目に見えるものとなる.すべての地表水の流路を点検し,それらがすべて地下トレンチに流入するようにする.
特に圧力抑制プールが破損していると思われる2号機では,圧力抑制室全体を埋め殺すことが必要である.ここには破損した核燃料の破片ないし細粉が残留している可能性があるので,コンクリートの組成を吟味する必要がある.鉛ないしホウ素を一定程度混入することは意味があると思われる.セメントは硬化するとき水和熱を発生するので,ダムや大規模構造物で使われる低熱セメントを用い,さらに氷で十分冷却した水を投入する必要がある.一度に打設できないときは,何度かに分けて施工するしかない.もし,施工区域が人間が立ち入れるくらいの放射線レベルなら,鉄筋の代わりにワイヤーを入れるくらいのことはできるかもしれない.
ここまで実施できれば多分水漏れは止まるだろう.ただし,使用済み核燃料一時貯蔵プールが水漏れしている可能性は残る.これは何か漏れ止め剤のようなものを使って止めることができるだろう.位置と形状によっては女性の柔らかい頭髪を混入させるだけで止まるかもしれない.
海面に向かっている冷却水の取水口と排水口は完全に閉鎖しなくてはならない.この水路系の放射線レベルを測定すれば,表流水ないし雑排水系から放射性汚染水が流入している箇所を特定できるだろう.もし,そのような箇所があれば水流を地下トレンチの方に誘導するような工事が必要である.というか,もし海岸線の放射線レベルが依然として高いようなら,海岸線に並行に空掘りを掘って染み出してきた水をトレンチに落とすことが必要になるだろう.
水漏れが止まり,圧力容器の水循環を確保し,貯蔵プールの水位を維持することができれば,基本的にはノーマルな解体手順のコースに戻ることができる.多分,その時期には原子炉も冷温停止していることだろう.しかし,おそらく原子炉建屋周辺で長時間の作業を行うことは依然としてかなり長期にわたって難しいのではないかと推定される.
この先はわたしのイメージである.一言で言えば,放射性廃棄物のドライ貯蔵(固化)とウェット貯蔵(水蔵)を併用し原子炉を永久に封印する.映像から見る限り原子炉建屋の外壁の状況はまちまちだが,一般的に言えば上層部を除いた部分はしっかりしているように観察されるので,建屋外壁を仮枠としてコンクリートを上記要領で打設することがあるところまでは可能である.

格納容器の上蓋までコンクリートを打ち込んだ段階で可能ならば燃料棒の取り出しを行う.作業不可能のときは,珪素(ガラス粉)・鉛・ホウ素その他で燃料棒を覆った後,コンクリートを充填して蓋を閉める.貯蔵プールの底面までコンクリートを打ち込んだ段階で,可能ならば燃料棒の取り出しを行う.作業不可能のときは,珪素・ベントナイト粉体(粘土粉)などの混合物を散布して燃料棒の間隙に充填した後,コンクリート打設してプールに蓋をする.
上に残った瓦礫,屋根の残骸などは可能ならば撤去して放射性廃棄物として処分する.不可能ならば放置する.最後に原発6基を大きく取り囲む円形ないし楕円形の堤防を築き,海水を注ぎ込んで6基すべての原子炉を水没させる.堤防の断面は少なくとも底面の幅150メートル,高さ60メートル,上面の幅30メートルの台形とし,上記した粘土の土嚢を積み上げて構築する.場合によっては仁徳天皇陵に習って前方後円としてもよい.あるいは,政権与党の旗印に似せて8の字型にするということも考えられる.この場面ではロボット重機の活躍を期待したい.
現場的には大量の放射性汚染水をどうするかというところで関係者の苦悶・苦闘が続いている.基礎技術的には高濃度放射性廃液処理技術はすでに存在しているから,克服すべき課題は量の問題だけと言える.量の問題は最終的には時間の問題であり時間によって解決することができる.つまり,ある意味で汚染水の問題は火急の課題ではない.
本当の問題はその時間がお金に換算されるというところにある.なぜこの時期になって電力会社の公金注入による救済策が急浮上してきたのか?福島第一原発を廃棄処分するのに30年間で7000億円かかると試算されている.誰がソロバンを弾いたのだろう?いかにももっともらしい数字だが本当にそんなにかかるのか?(実際のところ,30年間のうちの大部分の時間は単に放射線レベルを下げるために施設を「放置」しておくための時間だ).国が専門家・技術者・作業員を直接雇用してこれに当たれば,おそらく100億円あればお釣りが来るだろう.
実際,もっとも危険度の高い汚れ作業はすべて低賃金で働く使い捨ての労務者に押し付けられるのであり,残ったお金は国民を食い物にしてきた紳士達のポケットにまるまる仕舞い込まれるのだ.この不当なマネーの分け前に預かるには是が非でも東京電力を私企業として延命させる必要があるということが彼らにもようやく分かったというのが真相である.
原子力の軍事利用と平和利用が同じ人たちによりまったく同じ(殺人)思想で推進されてきたことは驚くべき事実だ.チェルノブイリの事故から25年が経過し,「石棺」と呼ばれる原子炉建屋の外部被覆構築物の建て替えが検討されている.この1000億円かかると言われるプロジェクトを推進しているのは原爆を作った人たちの会社ベクテルである.原爆の製造者が原子力発電所を建設し,それが爆発すると今度はその後始末でさらに儲けるという構図.ウクライナ政府にはそんな巨額の金はないので,日本政府もかなりの金額をそれに拠出しようとしている.

前回の「原発危機:冷却水小循環系(ECCS)を閉鎖大循環系で代替する」というエントリでわたしは,現在実行されている汚染水の仮設ポンプによる移送を閉鎖循環系に転換し,最終的にはある程度恒久的な施設として構築することを提案した.この方式では汚染水の産出量を極小に抑えることができるので,事後の高濃度放射性物質廃棄処理で扱わなくてはならない廃棄物量を大幅に削減することができるというコストメリットがある.しかし,上記したように,廃棄処理物量削減のコストメリットということに彼らはあまり関心を持っていないようだ.
原子炉建屋地下と地下のトレンチに滞留している汚染水は1シーベルト以上という高濃度放射性廃水である.1シーベルトというのはわたしの身体感覚ではサリンなどの有毒ガスとほぼ同等の致死性液体であり,それを大量に循環させることの難しさはわたしも承知している.その意味では東電が採用した外部プールへの「移送」というのはそれなりの合理性があると思う.
この方式の欠点は容易に想像できるように膨大な水量を閉鎖水系として管理しなくてはならないという点にあるが,メリットもある.それは,この方式では水流を循環させないのである意味で一種の「洗浄」を暗黙に実施していることになる点だ.膨大な汚染水を管理しなくてはならなくなるが,その代わり建屋内の放射線レベルは徐々に下降し作業環境はかなり改善されるだろう.
しかし,十全な作業が遂行できるようにするためには「水漏れ」を完全に止めなくてはならない.水漏れを完全に止めることができなければ,最終的に無限量の水を注水することになり,必然的に無限量の汚水をどこかに保管しなくてはならないという「不可能な事態」に何時か直面することになる.つまり,ある時点で現在の水管理方式は破綻する.(これは注水された水が環境に放出されていないということを仮定した議論である.もし,たとえばどこかに海洋に放出するような「裏道」が存在すれば,注水量と放出量が等しくなった時点で均衡する.)目先の作業に追われて,この辺りに関してはまだ誰も考えていないようなので,2,3のポイントを挙げておこう.
1号~3号機の建屋地下にたまり水が発生し,それを汲み出す作業が行われているが,相当量の水を汲み出しても10センチメートル程度しか水位が低下しないという報告がある.これは容易に想像されるようにトレンチと原子炉建屋地下が連通しているためであり,トレンチの水面を下げなければ地下のたまり水の水面は下がらない.逆にトレンチの水を汲み出せば建屋地下の水も自然に引くことになるだろう.

わたしの目には,これはほとんど「奇跡」のように見える.もし,これがなかったらどういうことになっていたか?もしもこのトレンチがなければおそらく太平洋沿岸はすでに死の海と化していたに違いない.これは「汚染水」などではなく,わたしたちの国土と大洋を守ってくれた「神水」と考えなければバチが当たるだろう.最悪の場合6基の原子炉が連続的に臨界に達し,そこに積み上げられている膨大な量の薪(使用済み・未使用核燃料)とともに壮絶な大爆発を起こしていたことを考えれば,これを「神水」と呼ぶことが誇張でないことはお分かり頂けるだろう.
この1万3300トンの「神水」を少なくとも3度汲み替える必要があるだろう.つまり,少なくとも4万トンの「神水」を蓄えることのできるプールが必要である.前回エントリでは阿修羅の匿名氏の提案を否定的に評価しているが,ここまで来るとタンカーを使うというのがもっとも現実的な提案であるように思われてくる.2万トンタンカーなら2艘,4万トンなら1艘で間に合うというのは大きなアドバンテージだ.匿名氏の先見の明には脱帽する他ない.真の技術者とお見受けする.
放射性廃棄物の海洋投棄に関しては厳しい国際取り決めがあり,その点からも「船」は難しいのではないかと思っていたのだが,実は「はしけ」を放射性液体廃棄物処理施設として使用しているという実例があった.旧ソ連の老朽原子力潜水艦の解体に関わり日本からの資金援助によって建造された「すずらん丸」がズヴェズダ造船所に係留され2001年から稼動している.すずらん丸は年間7000トンの低レベル放射性液体廃棄物を処理する能力を持っている.

汚染水を保管する容器は何とか確保できたとしてその先を考えよう.直ちにやるべきことはトレンチの水をぐんぐんと引いて容器に移し替えてゆくことである.トレンチの水面が下がれば建屋地下の水も引き,予定した作業が可能になる.どんな作業が予定されていたのか知らないが,わたしはこの時点で建屋地下をコンクリートで完全に充填し埋め殺すべきであると思う.なぜか?「汚染水の漏れ」がある箇所を作業者の被曝リスクを回避しながら完全に封止するためである.わたしは現時点においてはこれ以外の方法はないのではないかと思う.
環境への放射性物質の放出を防止することは政府の日本国民に対する義務であり,日本の国際社会に対する責務である.高濃度放射性汚染水の流出を食い止めるには,「汚染水の漏れ」を早急に止める必要がある.東電は現時点ではまだ,法令に基づきマニュアルに記述された〔使用済み核燃料排出〕→〔系統除染〕→〔安全貯蔵〕→〔解体撤去〕→〔廃棄物処理処分〕という流れを型通り実施したいと思っているようだが,無理だ.何よりも時間が待ってくれない.
従って,福島第一原発埋葬の第一段階は,レベルゼロ,つまり地表面から下のすべての構築部分にコンクリートを充填することになると思う.これには原子炉建屋も含まれる.実際の建造物がどのようなレベルで構築されているかの詳細は分からないが,レベルゼロ以下の空間をすべてコンクリートで充填すれば,少なくとも排水系のすべての漏れは止まるはずだ.コンクリートの打設はもちろん無人で行われなければならない.逆に言えば,現在のロボット技術で無人でできることと言えばそれくらいしかなさそうだ.

これにより,すべての溢れ水は(もしあれば)地表水となり,目に見えるものとなる.すべての地表水の流路を点検し,それらがすべて地下トレンチに流入するようにする.
特に圧力抑制プールが破損していると思われる2号機では,圧力抑制室全体を埋め殺すことが必要である.ここには破損した核燃料の破片ないし細粉が残留している可能性があるので,コンクリートの組成を吟味する必要がある.鉛ないしホウ素を一定程度混入することは意味があると思われる.セメントは硬化するとき水和熱を発生するので,ダムや大規模構造物で使われる低熱セメントを用い,さらに氷で十分冷却した水を投入する必要がある.一度に打設できないときは,何度かに分けて施工するしかない.もし,施工区域が人間が立ち入れるくらいの放射線レベルなら,鉄筋の代わりにワイヤーを入れるくらいのことはできるかもしれない.
ここまで実施できれば多分水漏れは止まるだろう.ただし,使用済み核燃料一時貯蔵プールが水漏れしている可能性は残る.これは何か漏れ止め剤のようなものを使って止めることができるだろう.位置と形状によっては女性の柔らかい頭髪を混入させるだけで止まるかもしれない.
海面に向かっている冷却水の取水口と排水口は完全に閉鎖しなくてはならない.この水路系の放射線レベルを測定すれば,表流水ないし雑排水系から放射性汚染水が流入している箇所を特定できるだろう.もし,そのような箇所があれば水流を地下トレンチの方に誘導するような工事が必要である.というか,もし海岸線の放射線レベルが依然として高いようなら,海岸線に並行に空掘りを掘って染み出してきた水をトレンチに落とすことが必要になるだろう.
水漏れが止まり,圧力容器の水循環を確保し,貯蔵プールの水位を維持することができれば,基本的にはノーマルな解体手順のコースに戻ることができる.多分,その時期には原子炉も冷温停止していることだろう.しかし,おそらく原子炉建屋周辺で長時間の作業を行うことは依然としてかなり長期にわたって難しいのではないかと推定される.
この先はわたしのイメージである.一言で言えば,放射性廃棄物のドライ貯蔵(固化)とウェット貯蔵(水蔵)を併用し原子炉を永久に封印する.映像から見る限り原子炉建屋の外壁の状況はまちまちだが,一般的に言えば上層部を除いた部分はしっかりしているように観察されるので,建屋外壁を仮枠としてコンクリートを上記要領で打設することがあるところまでは可能である.

上に残った瓦礫,屋根の残骸などは可能ならば撤去して放射性廃棄物として処分する.不可能ならば放置する.最後に原発6基を大きく取り囲む円形ないし楕円形の堤防を築き,海水を注ぎ込んで6基すべての原子炉を水没させる.堤防の断面は少なくとも底面の幅150メートル,高さ60メートル,上面の幅30メートルの台形とし,上記した粘土の土嚢を積み上げて構築する.場合によっては仁徳天皇陵に習って前方後円としてもよい.あるいは,政権与党の旗印に似せて8の字型にするということも考えられる.この場面ではロボット重機の活躍を期待したい.
by exod-US
| 2011-04-02 00:40
| フクシマ・サボタージュ