2007年 05月 21日
明月さんの提案された「自民党と民主党候補者に改憲の賛否を問うアンケート」についての当ブログの見解
|
耐震強度偽装事件などを追求して持ち前の鋭い分析力を発揮しておられる《反戦な家づくり》の明月さんから提起された『【緊急】賛同ブロガー募集!「自民党と民主党候補者に改憲の賛否を問うアンケート」』というアクションについての当方の見解をまとめておきたい.私自身,筋金の入った『護憲論者』のつもりであるし,現時点においては現行憲法の一字一句たりと言えども変えてはならない,むしろ今必要なのは現行憲法を文字通り実現することであり日本国憲法の精神を全世界に広めてゆくことであると考えているので,軍事最高司令官を自称する現アベシ政権の強行な改憲策動に対し明月さんらの抱く危機意識には強く同感するものがありその提案趣旨に同意しまた協賛を惜しまないものであるが,テクニカルな面でやや異議のある面もあって2,3コメントを残した.この提案は当初《雑談日記(徒然なるままに、。)》のSOBAさんが発案されたもので,すでに議員リスト・文案の作成など具体的作業に入っているが,SOBAさんはその後やや批判的な位置に転じている.以下のテキストは《反戦な家づくり》および当ブログのコメント欄から採録した.コメント中で訂正した箇所は本文中に修正を反映してフィックスした.
2007/05/19(土) 07:10:37 | URL | 馬場英治 #PIpocw5A
趣旨には大いに賛成ですが
アンケート対象を自民党まで拡張するというのは大変よい方向だと思います.参議院議員の任期は6年間ありその間は改選されませんが,安倍政権の改憲スケジュールでは3年後に改憲を提起することになっていますから,今回の参院選予定候補者の立ち位置をあらかじめ確認しておくことは有権者が投票行動を行う上での必須の条件とも言えます.この意味でアンケートの趣旨を「9条改定の是非」に絞り込むのは適切な判断だと思います.
もしそうであるとすれば,ここで公明党を除外するというのは腑に落ちません.私はむしろ無所属を含めた全候補者に同趣旨のアンケートを実施し,それを公開すべきではないかと思います.もちろん技術的ないし時間的あるいは労力的な問題もあるとは思いますが,この種のアンケートはできる限り「透明」なポジションで実施するのが妥当であるように思うのです…自・公政権を切り崩すという「戦略」は理解できますが,私自身は「公明党の少なくとも一部」は護憲勢力であると認識しています(自民党内の護憲論者が「味方」であるのとまったく同様趣旨).
アンケートの文面を民主党向けと自民党向けで区別するというのも「何だかな~」という感じがします.(厳密に言えばそれでは―統計学的な意味で―公正な「アンケート」とは言えません)茶文字部分はすっきりと全面削除された方がよいのではないでしょうか?補足意見を述べれば,アンケートを2段階で実施するということも考えられます.最初は(早い段階)政党の予定候補者を対象に実施し,2回目(選挙直前)に全候補者を対象にアンケートを行うというものです.
Commented by 明月 at 2007-05-21 09:05 x
反戦な家づくり・明月です。コメントありがとうございました。
色々悩みながら進んでいます。私の考えは、続報としてアップしておりますので、もしよろしければお目通しいただければと思います。いずれにしても、弱小な一生活者として、トライアンドエラーをおそれずに実行してみようと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。
Commented by exod-US at 2007-05-21 14:16 x
明月さん:お越し頂きありがとうございます.あまり掻き回すようになることも本意ではありませんので,こちらでレスすることにします.
「戦後型の政党政治は終わっている。すでにファシズムに片足つっこんでいる。」という時代認識ないし危機感は私も共有します.教育基本法改定,国民投票法,辺野古への掃海母艦派遣,集団的自衛権有識者懇談会の立ち上げなど,エンジン全開の攻勢がかかっています.「私は今,権力の頂点にいる」発言,またクウェートの空自隊員への訓示の中で自らを「最高司令官」と呼んでいたというFT紙の報道などからしても,安倍晋三という男が本気で「独裁者」に成るつもりでいることは明らかです.
おそらく一番大きな見解の相違点は公明党の評価だろうと思います.もちろん私は公明党・創価学会が最終的には神権政治(国立戒壇)を標榜し指導者を偶像視するファッショ的性格の団体であるという認識はありますが,公明党が9条改定に賛成することはないだろうと見ています.(自民党案を採決する場合)自民党は党議拘束をかけるかもしれませんが(それをやったら自民党も割れる?)公明党議員まで縛ることはできません.むしろ,民主党議員の一部が賛成に回る可能性の方が高いような気がします.
衆参両院で3分の2の改憲に必要な圧倒的多数を獲得するためには,(現状の議席配分に大きな変動がない限り)自民党案と民主党案を一本化する必要があります.もちろん有り得ない話ではありませんが,そうなった時はもはやそれは紛れもない「戦時の挙国一致・翼賛体制」に他なりません.国民がそれを許すでしょうか?私は最終的に日本国憲法第9条は改定されないものと確信しています.日本国民が主体的にそれを選択することを希望しまた期待しています.
その意味では,「集団的自衛権」の問題の方がはるかに重大な差し迫った課題であるように思われます.もしこのような解釈改憲がまかり通るようなことがあれば,どなたかが指摘されていたように「実質的に改憲すら不要」になってしまいます.安倍は声高に改憲を叫んでいますが,むしろそれこそがプロパガンダなのではないか?という気がします.(実際には不可能であることを知りながら,争点をそらすために前面に押し出しているのではないか?)
私は明月さんの提起されている企画に反対している訳ではありません.思い付いた人が思ったことを思ったように進めて頂くということで何ら問題ないと思います.もちろん衆知を集める[尽くす]というのは意義深いことと思いますので,この件に関しても時間の許す限り活発に討論を尽くされるのがよいと思います.
国民投票法案について:
このブログでは『国民投票法案』についてかなり早い時期から取り上げていますが,憲法に(当然ながら)改定の規定がある以上,手続法を整備することに関しては何の異議もありません.2005年9月頃の自民党当初案はまさしく『暗黒立法』と呼んで差し支えないような罰則規定(首謀者には7年の懲役を科するなど)まで含んだとんでもない代物でした.今回採択された法案がはなはだ不十分なものであることは何項目にも及ぶ付帯決議が付されたことからも明らかですが,私見ではおおむね妥当なものと考えています.
憲法特別委が6日審議入り 衆院、[国民]投票法案は曲折も (共同通信,2005-10-01)
小泉ファッショ政権の暗黒立法,『国民投票法』が上程されようとしている (2005-09-25)
あなた見られてます 監視と安全のはざまで <上・中・下> (北海道新聞,2005,07-21)
当初の議論では「投票を条項別に行う」などの案もあったようですが,最終的には『改正案に賛成か?反対か?』だけを問うものになりました.もちろん法体系というのは全体として整合していなくてはなりませんから,特に憲法のような基本的立法に関しては当然のことと言えます.従って,もしこの時点で『戦時翼賛体制』が(まだ?)確立されていなかったとすれば,国民投票の対象となるのは『与党案(自民党単独+民主の一部という可能性も)』のみということになります.国民は(もし提起されたとしても)これを総力で否決するでしょう.もちろん政権側はメディア操作に限定されない策謀・奇計を含むあらゆる手段を取って来るに違いありませんが…
自民党最終案で私が気にしていたのはやや瑣末な問題ですが,投票方式です.上程された原案では賛成なら○反対なら×を付けるという方式になっていました.採択された最終議案ではこれを「賛成」ないし「反対」の文字を丸で囲むというように修正されました.また,丸で囲む代わりに一方を二重線で打ち消す方法も有効投票と認められることになりました.×を書くというのは否定的なニュアンスが強いので心理的な抵抗感があり,浮動層では安易に○を書いてしまう可能性がありましたが,この気がかりな点は払拭されました.
憲法改定反対,特に9条堅持の立場に立って国民投票法案自体を葬り去るないし成立に可能な限り抵抗するという立場は有り得るし,むしろ戦略的にはまったく正しいと思います.私自身の立ち位置もそれと異なるものではありませんが,必ずしも民主党案に賛成というのでもありません.憲法改正以外でも国民投票を可能にするという提案,あるいは投票権者の年齢を18歳に下げるという提案などについても十分な論議はなされていなかったように思います.
私は(成人)年齢引き下げにはどちらかというと反対です.最低投票率の問題も重要であるとは思いますが,その規定がないと戦えない(不利になる)ということはないと思います.それにしても,このように重要な基本法案を『強行採決』で押し通すという与党の姿勢に深い危惧の念を抱かずにはいられません.
公務員ないし教員が『その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない』という規定(第103条)もまぁ妥当なものでしょう.105条の国民投票期間中(期限前14日~)の広告放送禁止も止むを得ないとします(広報の放送・新聞広告は実施される).第109条以下には「組織的多数人買収及び利害誘導罪」などの罰則規定がありますが,おおむね妥当のように思われます.気になるのは,「組織により、多数の投票人に対し、憲法改正案に対する賛成又は反対の投票をし又はしないようその旨を明示して勧誘して、」とあるので,一見すると『組織的でない買収は可』であるように読める点です.精査してませんが,もしそうであればこれは(とんでもないお粗末な)法の粗漏(抜け穴)ということになります...
なお,成案にも上記した『首謀者は7年以下の懲役ないし禁固に処する』という罰則規定が残っていますが,これは「多数集合して,投票所、開票所、国民投票分会場若しくは国民投票会場を騒擾し、又は投票、投票箱その他を損ない,もしくは奪取するなど」の場合に限定されるので,当初案で狙っていた「一般市民のデモ・集会・討論会に対する弾圧,ビラやポスターの禁止」のような強権立法の色彩は払拭されたものと考えます.[当初の自民党原案に含まれていた多くの反国民的な毒牙を国会討論を通じて精査し,ほぼ完全に抜歯して下さった多くの与党・野党を問わず良識ある国会議員諸氏のご努力を多としたい.]
むしろ問題は国民投票法案(日本国憲法の改正手続に関する法律案)が成立したことによって,何かすべてが終わってしまったかのように錯覚し,落胆してしまうことではないでしょうか?
【付記】 明月さんは,以下のように書かれている.
■次に、安倍が改憲を争点にしたことの、本気さから逃げてはいけない、ということ。
人気凋落のヤケクソで言い出したわけではない。安倍は、「勝負をかけてきた」のである。
別の言い方をすれば、「国民に、あきらめさせる」ということ。
今もっとも大事なことは,国民投票法が成立したくらいで「萎縮しない」ということだと思う.この意味で明月さんらの試みに(多少立ち位置の差はあるが)心からの支援を送りたい.
【付記2】 これは蛇足であるが,明月氏と私の間にはもう一つの興味深い相違点(争点)がある.例の「捨て子ポスト」に対する反応である.氏は「赤ん坊ポスト積極容認派」だ.私の意見はこちら(英文ゴメン!)で述べているが,この点に関しては少なくとも外見上私と安倍総理の意見は一致している.氏のご意見がよもや「アベがこう言った」からという条件反射的な反発によるものではないとは思うけれど,もし総理が反対に積極的支持の態度を示していたらどのように反応していたか?思考実験してみることをお勧めする.もとより私とて,彼ら(政治家)がまるで他人事のように語っているのを聞くと耳を疑いたくなる.「そのような社会」の悲惨を目の前にして何ら政治的責任を感じていないように見えるところが合点のいかないところである.
船田氏の正論で、安倍改憲を失楽園に!+キャンプや学校の授業で道徳&歴史洗脳教育が?! (日本がアブナイ!,2007-05-21)
改憲を争点とする、とはどういうことか。 (みんななかよく,2007-05-21)
安倍晋三に憲法 【新・ことわざ ○○~に刃物バージョン】 (らんきーブログ,2007-05-21)
参院選の争点を「改憲是か非か?」にしてはならない! (ちょっと一言,2007-05-15)
改憲を目論む連中に目に物見せてやりましょうや! (競艇場から見た風景,2007-05-14)
日本国憲法の改正手続に関する法律 (Wikipedia, 2007-05-19)
成立した法案(併合修正案)(衆議院公式、PDF),(衆議院公式、同HTML)
日本国憲法 (法庫,憲法)
Blog Ranking クリックありがとうございます.
2007/05/19(土) 07:10:37 | URL | 馬場英治 #PIpocw5A
趣旨には大いに賛成ですが
アンケート対象を自民党まで拡張するというのは大変よい方向だと思います.参議院議員の任期は6年間ありその間は改選されませんが,安倍政権の改憲スケジュールでは3年後に改憲を提起することになっていますから,今回の参院選予定候補者の立ち位置をあらかじめ確認しておくことは有権者が投票行動を行う上での必須の条件とも言えます.この意味でアンケートの趣旨を「9条改定の是非」に絞り込むのは適切な判断だと思います.
もしそうであるとすれば,ここで公明党を除外するというのは腑に落ちません.私はむしろ無所属を含めた全候補者に同趣旨のアンケートを実施し,それを公開すべきではないかと思います.もちろん技術的ないし時間的あるいは労力的な問題もあるとは思いますが,この種のアンケートはできる限り「透明」なポジションで実施するのが妥当であるように思うのです…自・公政権を切り崩すという「戦略」は理解できますが,私自身は「公明党の少なくとも一部」は護憲勢力であると認識しています(自民党内の護憲論者が「味方」であるのとまったく同様趣旨).
アンケートの文面を民主党向けと自民党向けで区別するというのも「何だかな~」という感じがします.(厳密に言えばそれでは―統計学的な意味で―公正な「アンケート」とは言えません)茶文字部分はすっきりと全面削除された方がよいのではないでしょうか?補足意見を述べれば,アンケートを2段階で実施するということも考えられます.最初は(早い段階)政党の予定候補者を対象に実施し,2回目(選挙直前)に全候補者を対象にアンケートを行うというものです.
Commented by 明月 at 2007-05-21 09:05 x
反戦な家づくり・明月です。コメントありがとうございました。
色々悩みながら進んでいます。私の考えは、続報としてアップしておりますので、もしよろしければお目通しいただければと思います。いずれにしても、弱小な一生活者として、トライアンドエラーをおそれずに実行してみようと思います。今後とも、よろしくお願いいたします。
Commented by exod-US at 2007-05-21 14:16 x
明月さん:お越し頂きありがとうございます.あまり掻き回すようになることも本意ではありませんので,こちらでレスすることにします.
「戦後型の政党政治は終わっている。すでにファシズムに片足つっこんでいる。」という時代認識ないし危機感は私も共有します.教育基本法改定,国民投票法,辺野古への掃海母艦派遣,集団的自衛権有識者懇談会の立ち上げなど,エンジン全開の攻勢がかかっています.「私は今,権力の頂点にいる」発言,またクウェートの空自隊員への訓示の中で自らを「最高司令官」と呼んでいたというFT紙の報道などからしても,安倍晋三という男が本気で「独裁者」に成るつもりでいることは明らかです.
おそらく一番大きな見解の相違点は公明党の評価だろうと思います.もちろん私は公明党・創価学会が最終的には神権政治(国立戒壇)を標榜し指導者を偶像視するファッショ的性格の団体であるという認識はありますが,公明党が9条改定に賛成することはないだろうと見ています.(自民党案を採決する場合)自民党は党議拘束をかけるかもしれませんが(それをやったら自民党も割れる?)公明党議員まで縛ることはできません.むしろ,民主党議員の一部が賛成に回る可能性の方が高いような気がします.
衆参両院で3分の2の改憲に必要な圧倒的多数を獲得するためには,(現状の議席配分に大きな変動がない限り)自民党案と民主党案を一本化する必要があります.もちろん有り得ない話ではありませんが,そうなった時はもはやそれは紛れもない「戦時の挙国一致・翼賛体制」に他なりません.国民がそれを許すでしょうか?私は最終的に日本国憲法第9条は改定されないものと確信しています.日本国民が主体的にそれを選択することを希望しまた期待しています.
その意味では,「集団的自衛権」の問題の方がはるかに重大な差し迫った課題であるように思われます.もしこのような解釈改憲がまかり通るようなことがあれば,どなたかが指摘されていたように「実質的に改憲すら不要」になってしまいます.安倍は声高に改憲を叫んでいますが,むしろそれこそがプロパガンダなのではないか?という気がします.(実際には不可能であることを知りながら,争点をそらすために前面に押し出しているのではないか?)
私は明月さんの提起されている企画に反対している訳ではありません.思い付いた人が思ったことを思ったように進めて頂くということで何ら問題ないと思います.もちろん衆知を集める[尽くす]というのは意義深いことと思いますので,この件に関しても時間の許す限り活発に討論を尽くされるのがよいと思います.
国民投票法案について:
このブログでは『国民投票法案』についてかなり早い時期から取り上げていますが,憲法に(当然ながら)改定の規定がある以上,手続法を整備することに関しては何の異議もありません.2005年9月頃の自民党当初案はまさしく『暗黒立法』と呼んで差し支えないような罰則規定(首謀者には7年の懲役を科するなど)まで含んだとんでもない代物でした.今回採択された法案がはなはだ不十分なものであることは何項目にも及ぶ付帯決議が付されたことからも明らかですが,私見ではおおむね妥当なものと考えています.
憲法特別委が6日審議入り 衆院、[国民]投票法案は曲折も (共同通信,2005-10-01)
小泉ファッショ政権の暗黒立法,『国民投票法』が上程されようとしている (2005-09-25)
あなた見られてます 監視と安全のはざまで <上・中・下> (北海道新聞,2005,07-21)
当初の議論では「投票を条項別に行う」などの案もあったようですが,最終的には『改正案に賛成か?反対か?』だけを問うものになりました.もちろん法体系というのは全体として整合していなくてはなりませんから,特に憲法のような基本的立法に関しては当然のことと言えます.従って,もしこの時点で『戦時翼賛体制』が(まだ?)確立されていなかったとすれば,国民投票の対象となるのは『与党案(自民党単独+民主の一部という可能性も)』のみということになります.国民は(もし提起されたとしても)これを総力で否決するでしょう.もちろん政権側はメディア操作に限定されない策謀・奇計を含むあらゆる手段を取って来るに違いありませんが…
自民党最終案で私が気にしていたのはやや瑣末な問題ですが,投票方式です.上程された原案では賛成なら○反対なら×を付けるという方式になっていました.採択された最終議案ではこれを「賛成」ないし「反対」の文字を丸で囲むというように修正されました.また,丸で囲む代わりに一方を二重線で打ち消す方法も有効投票と認められることになりました.×を書くというのは否定的なニュアンスが強いので心理的な抵抗感があり,浮動層では安易に○を書いてしまう可能性がありましたが,この気がかりな点は払拭されました.
憲法改定反対,特に9条堅持の立場に立って国民投票法案自体を葬り去るないし成立に可能な限り抵抗するという立場は有り得るし,むしろ戦略的にはまったく正しいと思います.私自身の立ち位置もそれと異なるものではありませんが,必ずしも民主党案に賛成というのでもありません.憲法改正以外でも国民投票を可能にするという提案,あるいは投票権者の年齢を18歳に下げるという提案などについても十分な論議はなされていなかったように思います.
私は(成人)年齢引き下げにはどちらかというと反対です.最低投票率の問題も重要であるとは思いますが,その規定がないと戦えない(不利になる)ということはないと思います.それにしても,このように重要な基本法案を『強行採決』で押し通すという与党の姿勢に深い危惧の念を抱かずにはいられません.
公務員ないし教員が『その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない』という規定(第103条)もまぁ妥当なものでしょう.105条の国民投票期間中(期限前14日~)の広告放送禁止も止むを得ないとします(広報の放送・新聞広告は実施される).第109条以下には「組織的多数人買収及び利害誘導罪」などの罰則規定がありますが,おおむね妥当のように思われます.気になるのは,「組織により、多数の投票人に対し、憲法改正案に対する賛成又は反対の投票をし又はしないようその旨を明示して勧誘して、」とあるので,一見すると『組織的でない買収は可』であるように読める点です.精査してませんが,もしそうであればこれは(とんでもないお粗末な)法の粗漏(抜け穴)ということになります...
なお,成案にも上記した『首謀者は7年以下の懲役ないし禁固に処する』という罰則規定が残っていますが,これは「多数集合して,投票所、開票所、国民投票分会場若しくは国民投票会場を騒擾し、又は投票、投票箱その他を損ない,もしくは奪取するなど」の場合に限定されるので,当初案で狙っていた「一般市民のデモ・集会・討論会に対する弾圧,ビラやポスターの禁止」のような強権立法の色彩は払拭されたものと考えます.[当初の自民党原案に含まれていた多くの反国民的な毒牙を国会討論を通じて精査し,ほぼ完全に抜歯して下さった多くの与党・野党を問わず良識ある国会議員諸氏のご努力を多としたい.]
むしろ問題は国民投票法案(日本国憲法の改正手続に関する法律案)が成立したことによって,何かすべてが終わってしまったかのように錯覚し,落胆してしまうことではないでしょうか?
【付記】 明月さんは,以下のように書かれている.
■次に、安倍が改憲を争点にしたことの、本気さから逃げてはいけない、ということ。
人気凋落のヤケクソで言い出したわけではない。安倍は、「勝負をかけてきた」のである。
別の言い方をすれば、「国民に、あきらめさせる」ということ。
今もっとも大事なことは,国民投票法が成立したくらいで「萎縮しない」ということだと思う.この意味で明月さんらの試みに(多少立ち位置の差はあるが)心からの支援を送りたい.
【付記2】 これは蛇足であるが,明月氏と私の間にはもう一つの興味深い相違点(争点)がある.例の「捨て子ポスト」に対する反応である.氏は「赤ん坊ポスト積極容認派」だ.私の意見はこちら(英文ゴメン!)で述べているが,この点に関しては少なくとも外見上私と安倍総理の意見は一致している.氏のご意見がよもや「アベがこう言った」からという条件反射的な反発によるものではないとは思うけれど,もし総理が反対に積極的支持の態度を示していたらどのように反応していたか?思考実験してみることをお勧めする.もとより私とて,彼ら(政治家)がまるで他人事のように語っているのを聞くと耳を疑いたくなる.「そのような社会」の悲惨を目の前にして何ら政治的責任を感じていないように見えるところが合点のいかないところである.
船田氏の正論で、安倍改憲を失楽園に!+キャンプや学校の授業で道徳&歴史洗脳教育が?! (日本がアブナイ!,2007-05-21)
改憲を争点とする、とはどういうことか。 (みんななかよく,2007-05-21)
安倍晋三に憲法 【新・ことわざ ○○~に刃物バージョン】 (らんきーブログ,2007-05-21)
参院選の争点を「改憲是か非か?」にしてはならない! (ちょっと一言,2007-05-15)
改憲を目論む連中に目に物見せてやりましょうや! (競艇場から見た風景,2007-05-14)
日本国憲法の改正手続に関する法律 (Wikipedia, 2007-05-19)
成立した法案(併合修正案)(衆議院公式、PDF),(衆議院公式、同HTML)
日本国憲法 (法庫,憲法)
Blog Ranking クリックありがとうございます.
by exod-US
| 2007-05-21 17:48
| エクソダス2005始動宣言